私の家族は少しばかり歪なのかもしれない

最近自分の家族について自分の考えを整理することが多いので、今回は我が家について書きます。

うちの両親はちょっと毒っぽい。
ここで「毒親だ!」と声高に書けないのは、ネットの海で見かけたモンスター毒親たちはうちの両親の遥か上をいっていて、私ごときが「えーんうちの毒親が~」なんて到底言える空気じゃないなと素直にそう感じたからだ。

 

我が家は私の他に子がなく、母は家事をやらず家でテレビばかり見ている父親の悪口で忙しい。そしてその悪口はそこそこの確率で私に向かい、最終的には「あんたのそういうところは父親そっくり」の毒母固有攻撃に着地する。

父親に対してどうやってもプラスの感情を抱けない私はそれを聞く度に「この血が憎いッッ!!!!」と己の半身が嫌で嫌で仕方がなくなるし、なけなしの自己肯定感が一気にマリアナ海溝くらい沈み込んでしまうのだ。

一度これに対して「本当に自己肯定感が終わってアカンことになるのでやめてくれ」と抗議したことがあったが、「だって本当のことじゃん」と返されて絶句したのをよく覚えている。1、2年前の話だろうか。
その時は台所にいたのだが、よく包丁を手に泣き喚かなかったなと当時の自分を褒めてあげたいくらいだ。そのくらい私は自分の出生を呪っていたし、その呪いは今でも正直全然とけていない。

 

父は基本的に仕事と家のことを両立できない人だし、家では仕事の愚痴ばかり言っている。やれ「あいつは気を遣えない」だの「東大出てても使えないやつは山ほどいる」だの話題に事欠かない。
それを聞きながら私は毎度「じゃああんたはどれだけ大層な人間なんですか? 家にいる家族の1人も幸せにできていないのに?」と思うのだが、それをそのまま口にするとドメスティックなバイオレンスで家庭が一気に崩壊してしまう可能性があるので、じっと黙っている。

暫くして父が寝た後、母が私にクソデカい声で「ほんとあいつ家のこと何もやんねえ癖に文句だけは言うよな」と愚痴をこぼし始め、地獄耳の父親が母がヒートアップしてくるぴったりのタイミングでのそりと起き上がってきて口論になる。我が家で今まで何度も繰り返されてきた光景だ。
私は家庭というのはこれが当たり前と思って生きてきていたのだが、どうやらそうでもないみたいだぞということに気付けたのは下手したら成人してからだったかもしれない。

 

さて、そんな我が家だが、普段から家族仲が北極圏のごとく冷え切っている訳ではない。両親がテレビを見て談笑している時も(たまには)あるし、私がそれに混ざることだってある。

でも、だからこそタチが悪いのだ。これはまさにDV男から逃げられない彼女の心境と同じで、「でも優しい時もあるんだよ、本当なんだよ」という状況が生まれるのである。

両親のことは正直人として全く尊敬できないし、自分は絶対にこうはなりたくないという反骨精神で生きている。けれど、ふとした瞬間に、小さい頃の楽しかった思い出とか、三人で出掛けた旅先の景色とか、そういうのがフラッシュバックして泣きたくなることがある。

 

母が私の行動へ干渉して、私の幸福を値踏みするようになったのはいつからだろう。
父が私に嫌われているかもしれないと嘆いていたのを母から聞いて「逆に嫌われてないと思っていたのか?」と冷ややかに思ったのはいつだったろう。

 

私はこのどっちともつかない両親への気持ちを、ずっと「良くないもの」だと思っていた。両親を愛せない私がおかしいのだと。他でもない私自身が無意識のうちに「親なんだから敬わなきゃ」という考えに憑りつかれていたのだろう。

けれど、自分の親をしんどいと感じることはいけないことなのだろうか?

母は私の行動を遠巻きに把握しようとするし、外食の機会が増えただけでネチネチと嫌味を飛ばしてくる。私の性格のうち自分の気に食わないところは全部父親譲りで、父と結婚した自分さえも認められていない。

 

私が24になる今でさえ、自分の娘が家から離れていくことを受け入れられないでいる。少し前に「一人暮らしをしたい」と言ったら「出て行っちゃうの?」と急にしおらしくなられたこともあった。知らんがな。頑張って自分で自分の人生を楽しくしてくれ。

父は幼い頃から私をコントロールしようとする人だった。勉強や進路については口を出されたことはないが、幼い日の私にこれでもかというくらい「食事の仕方が悪い」「マナーがなってない」「部屋を片付けろ」といった「ちゃんとしろ」という呪いを刻み付けた。自分だって食事の時にお茶碗にご飯粒をたくさん残したままの癖にね。どの口が言っているんだ?

歯並びを指摘されて「女の子なんだから矯正した方がいい」と言われたこともあったな。今だったら待ったなしで横っ面に右ストレートをブチキメているところだ。しかもこれは父にとっては恐らく100%の善意なのだから身震いする。
幸い暴力を振るわれたことはないが、物理的なものはなくても言葉の暴力には散々晒されてきたと思うので、書いていて早く家を出るべきだなと改めて思った。

 

結局のところ、父と母は似た者同士なのだ。この先この相手と何十年も一緒に闘っていけるかどうかなんて考えないまま結婚したに違いない。(これは完全な決めつけだがあながち間違ってもいないと思う)

そして、そんな2人の営みの末に誕生したのが私という訳だ。
数学の世界ではマイナスとマイナスを掛け合わせるとプラスになるが、その決まりごとが人間界にも通用すると誰かが教えてくれたならどんなに楽だったろう。私は今でも「あの2人から生まれた私も駄目な人間だ」という意識に潰されそうになることがある。

 

こう言っては身も蓋もないが、くだらないなあと思う。かつて好き合っていたであろう2人のことは置いておくとしても、今の両親の在り方は正直本当に「これで良かったのか?」と思わざるを得ない。

「若いもんが何を言うか」と言われても仕方がないが、世の中には素敵な関係性を築いている夫婦だってたくさんいる。そうなれなかったのは両親の自己分析が甘かったからとしか思えない。未婚の私が何を言っても説得力はないが、仮に結婚したとしても私は絶対に両親のような夫婦関係に陥りたくはない。

 

多分、我が家よりも倫理的にキツい環境で育った毒親育ちの方々はたくさんいるだろうし、そういう方々からしたら我が家の毒レベルなんて乳飲み子のようなものだろう。
けれど、「ああ、うちの両親ってやっぱりちょっと毒っぽいのかも」と認めることで自分が楽になれるならそれで良いんじゃないだろうか。少なくとも私はそうやって精神を保っていないとやっていられない。

この話は少し長くなりそうなので、また次の記事で続きを書きます。