花丸を上手く描けない子どもだった

いよいよ最終出社日が近づいてきたので、数日前から順序立ててオフィスの片付けをしている。

当初は「そうは言ってもそこまで大きいものはないしこれなら余裕では?」なんて思っていたが、最後の最後でデスクの奥の方からいつぞやの会社の食事会でもらった自分では絶対に買わないであろうお高い箱ティッシュ(ボックスの側面に箔押しの金ピカ筆字で至高と書いてある)が出てきた時には一瞬目の前が真っ暗になった。

このお高いティッシュは既にデスクの上にも1つ置かれているのだが、デスクの奥の奥からそのいかにも値の張りそうなパッケージがちらっと見えた瞬間に、そういえば2つ貰ったんだったな……と急激に記憶がフラッシュバックして絶望した。こんなところでトラップカードを発動させないでほしい。

「持って帰る段取り.txt」に日ごとの持ち帰り計画を書き込みながら、何故私はわざわざ紙袋を持参してまで箱ティッシュを持ち帰らないといけないんだろう……と途方に暮れていたのが2日ほど前。

そして昼休み、私はこの上なく平和的かつ荷物も減る最高のソリューションを思いついた。

「○○さん、このティッシュをあげよう」

そう言って私は隣の席の後輩の女の子にそのお高いティッシュを渡した。口に出してから「あげようとは傲慢な、ここは謙虚に貰ってくれない? といくべきだった」とマッハで後悔したが、受け取ってくれたのでよかった。ありがたい。誰も不幸せにならない最も適切な解決方法だと思う。荷物が1つ減って心の中で小躍りした。

ただ、問題は他にもある。

今朝になって、椅子に置いているクッションとブランケットの存在に思い至ったのだ。というか、この2つのあったかグッズの存在を思い出したからこそ、あのティッシュをどげんかせんといかんと本気で考えたのだ。

未だに細々としたものが散らばるデスクを眺めつつ、あと2日でどうにかなるだろうかと若干不安な気持ちになるが、どうにかするしかない。とりあえず、結局紙袋は必要だろうなという結論に落ち着いた。

 

お昼はカップ麺。ビバ不摂生。

インスタントの味噌ラーメンを啜ったけれど何だかあんまりおいしく感じなかったので、来年からはもうちょっとお昼に気を遣おうと思った。

残りの時間でFGOの周回。無心。無心で箱を開ける。

こういうひたすら精神を無にして取り組めるタスクは人間にとって結構必要だと思う。ある種の瞑想に近いのかもしれない。世界には私とFGOしか存在していないのではないかと錯覚するほど静かにただただ粛々と周回した。

 

夜は新しい会社の飲み会。

初めてスマブラをやらせてもらって、当然のようにぼろ負けしたけど楽しかった。今の会社とは全く雰囲気か違っていて、やっぱり会社によって全然カラーが違うんだなあと実感した。

何だかまだ少しふわふわとしていて、年が明けたらここで働くんだなあと思うと何だか不思議な感じがする。ぼやぼやとしていると自分の置かれている環境とか周りの人はどんどん変わっていく。どうしようもなく人生だ。無理のない範囲で頑張ろうと思います。

 

大分前から仕事という仕事がない状態なので、勤務時間中は思い思いにネットの海をサーフィンしてブイブイ言わせている(つもり)。気分だけは湘南のサーファーである。

それなりに血迷っているので無駄に指輪を眺めたりしていて、いかんいかんと心中で首を振りつつ、でもなんかもう既にそんな気持ちなんだよなあとマウスホイールをスクロールする。

この間の夜、駅までの道のりを歩いている時に「前に付き合ってた相手には『あなたは70点くらいの相手だけどこれから先もっと良い人に出会うかもしれないし』と言ってその度に泣かれていた」という話を聞いてやっぱりこの人はどこまでも信用できるなと心で深く頷いたのだけれど、そういう意味で、なんかもう今の私にとってこの人ってほとんど満点じゃない? とふと思った。満点というか、花丸という感じ。

何だろうな、点数じゃないんだけど、何となくこの人と同等(もしくはそれ以上)に相性の合う相手を見つけるのは恐らくめちゃくちゃに骨が折れるだろうなと漠然と思うのだ。

この先も一緒にいられたら楽しいだろうなと思うし、こう言うと一気に陳腐な感じになってしまうのだけれど、まさか自分が特定の相手に対してこんな気持ちになるなんて思っていなかった。

この先どうなるかなんて分からないけど、今あの人がいなくなってしまったらと考えると背中のあたりがヒヤッとする。舞い上がること扇風機の前の鰹節の如し。

冷静でいたいものですね、と思いつつ、暫くはこうやってフラフラしているのも良いのかもしれない。