【12/1~12/15】ボヘミアン・ラプソディほかまとめ

「お大事に、よいお年を」

病院の待合室で看護師さんが患者さんにそう声を掛けているのを聞いて、ああそうかもうそんな挨拶をする時期かとハッとした。

もう何年も前から年賀状を出さなくなったし、紅白も毎年ほとんど見ない。見るのは朝までさだまさしがだらだらと喋り倒すあのゆるい番組くらいのものだ。毎年毎年自分の中の「年末感」みたいなものが徐々に失われていっているような気がする。

今年ははじめて家族以外の人と年越しをするので、近所の神社の出店に出掛けたりなんかしてちょっと年末年始感を味わってみるのも良いかもしれない。

という訳で唐突に映画の話をします。

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シング・ストリート(2回目)
★4.8

前回見てから1ヶ月足らずで2回目。初見時は1人で見たので、2回目は人と一緒に見た。
1回目を見た後すぐにサントラをダウンロードして来る日も来る日もそればかり聞いていたので、1曲1曲に対する思い入れのレベルが違っていた。結果、ライブシーンでは思わずメロディを口ずさんでしまったし、ストーリーもやっぱり最高!!という感じでした。

1人で見ている時は基本的に控えめな干渉態度をとっておりコメディシーンでも「ンッフw」みたいな笑い方しかできないので基本的に無言を貫くのですが、人と見ると一緒にけらけら笑えるのでとても良かった。

ギグに出るかどうかでちょっと揉めるシーンのコナーとエイモンのやり取りとか、ライブリハーサルで校長がバク転し始めた時とか、楽しいシーンは本当にたくさんあるので誰かと一緒に見るとより楽しめる映画だなと思った。


ムーンライト
★3.4

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名前はシャロン、あだ名はリトル。内気な性格で、学校ではいじめっ子たちから標的にされる日々。自分の居場所を失くしたシャロンにとって、同級生のケヴィンだけが唯一の友達だった。 高校生になっても何も変わらない日常の中で、ある日の夜、月明かりが輝く浜辺で、シャロンとケヴィンは初めてお互いの心に触れることに…

各所で話題になっていたのと、LGBTテーマということでずっと見たかった1本。
本当に何の前情報もない状態で見たのだけれど、事実をとにかく淡々と描いている映画だなという印象。余計な悲しみとか喜びとか、そういうアップダウンが全くない。物語を見ているというよりは、ドキュメンタリー映画を見ているような感じ。

少年期・青年期・成人期みたいな3部構成になっているのだけれど、ポスターの写真が同じように3分割になっているのを後になって知っては~~~とため息が出た。このポスター、本当にすごく美しい。

公式サイトの説明にもあるけど、決してシャロン(とケヴィン)の特別な物語ではなくて、描かれているのは何というか「アイデンティティ」の話なので多分LGBTとかそういうことはあんまり関係ない。普段その手の映画を見ない人でも抵抗なく見ることができるんじゃないかと思う。

序盤のリトルが海で泳ぐシーンがすごく印象に残っている。
これは人に勧めるとか勧められて見るっていうよりは、静かな1人の部屋で明かりを消してひっそりと見終えた後そのまますぐに布団に入りたくなるような映画だった。


アリスのままで
★3.6

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50歳の言語学者アリス(ジュリアン・ムーア)は、大学での講義中に言葉が思い出せなくなったり、ジョギング中に家に戻るルートがわからなくなるなどの異変に戸惑う。やがて若年性アルツハイマー病と診断された彼女は、家族からサポートを受けるも徐々に記憶が薄れていく。ある日、アリスはパソコンに保存されていたビデオメッセージを発見し……。

若年性アルツハイマーを発症した大学教員の女性・アリスと、その家族の話。
アリスは何冊も本を出版してるようなバリバリのインテリ女性なんだけど、そこがすごく物語の肝になってると思う。聡明だった彼女が日に日に色々なことを思い出せなくなって自分のことすら分からなくなっていく様がありありと描かれていて、周りの家族の描き方も不自然なところがなくてよかった。

アリスの夫も、仕事で忙しい中本当に献身的にアリスを支えていて、2人がこれまでどんな関係を描いてきたかが伝わってきた。聡明さを失っていくアリスを受け入れられなくてぎくしゃくするのかなと思っていたら、そんな中でも自分にできることをやって何よりアリスとちゃんと向き合っていた。

娘のリディアもすごく良かった。長女のアナがアリスを分かりやすく病人として扱いがちなのに反して、将来のことで一番アリスと揉めていたリディアが最後までアリスに真正面から向き合っていたのが印象に残っている。基本的に親子の絆云々の話にはそこまで感動しないのだけれど、最後のシーンは人間と人間の話として本当に美しかったなあ。

何かの映画に「映画の登場によって人生が3倍になった」みたいなセリフがあるらしいのだけど(出典を教えて欲しい)、これは本当にその通りだと思う。この世の様々な選択肢の一片でも少し知ることができるようなこの体験は、やっぱり映画じゃないと味わえない気がする。


ボヘミアン・ラプソディ
★3.4

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めちゃくちゃにヒットしているということで、映画好きの友人と見に行ってきた。率直な感想としては「とてもお金が掛かっているなあ」という感じでした。

クイーンのことをよく知らない状態で行ったというのもあると思うのだけれども、全体として非常に中途半端にまとまっているなという印象を受けた。諸々現実との相違点もあるらしいけれど、いずれにせよそういうフィクションの部分も加えるのであれば、私のように知識がない人間でもより楽しめるような脚色の仕方があったんじゃないかなあと思ってしまう。

ライブシーンの再現度や演出の仕方も非常に凝っているだけに、もっとライブシーンをメインに据えた構成でも良かったんじゃないかなと思う。ただ、反対に、フレディを中心とした人間模様(特にジムとの関係性)をもっともっと描いても良かった気がする。そういう意味で、何だかうまくまとまっているようで実際には中途半端になってしまっているなと感じた。

「クイーン」というバンドについて描くにあたってフレディのセクシュアリティを描く必要があるという前提のもとで言うのであれば、一層そこにクローズアップしても良かったのではないかと思うし、逆の言い方をすればバンドというよりもフレディの物語になってしまっているところもあって、その辺りもどっちつかずだなあと感じる。本当にバンドとしてのクイーンを描くならもっと群像劇みたいな描き方もできたんじゃないかなあ。

キャストの演技とライブシーンの完成度が非常にハイレベルなだけに、ヒューマンドラマとしての側面とバンド映画としての側面の両立が微妙にできていないのが惜しい。友人とも話したのだけれど、『ボヘミアン・ラプソディ ドラマ編/ライブ編』みたいな感じで2本構成だったらもっと盛り上がったかもしれない。

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少し数えてみたら、今年は大体40本くらい見たようだった。
1ヶ月あたり3本ちょっとなので本数として多い訳ではないけれど、今まで1人で見ていた映画を人と一緒に見るという楽しみができたので(もちろんものによるけど)良かった。来年も変わらず一緒に映画を見たい。